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大分地方裁判所 昭和36年(ワ)73号 判決 1964年3月13日

原告 松田麒造 外五名

被告 別府市

主文

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用のうち弁論併合前に各事件につき生じた部分はそれぞれその事件の原告の負担とし、弁論併合後に生じた部分は原告らの負担とする。

事実

原告ら訴訟代理人は、「一、被告は、原告松田に対し金七〇万八、七九〇円、同龍巻地獄に対し金一六万九九〇円、同竃地獄に対し金三万四、五〇〇円、同鶴見園に対し金一一万一、七八〇円、同加藤に対し金一八万三、一六〇円、同宇都宮に対し金二三万八、七〇〇円並びに右各金員に対する昭和三六年三月一九日以降完済まで年五分の割合による金員を支払え、二、訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、請求原因として、

一、原告らはそれぞれ土地課税台帳上に地目鉱泉地と表示されているところの、次に掲げる地番の土地(以下、単に鉱泉地という)を所有している。

(一)  松田は別府市大字野田字御手洗七七五番の二鉱泉地一五五坪六合二勺(血の池地獄)

(二)  龍巻地獄は同所七八二番の二に鉱泉地一坪(龍巻地獄)

(三)  竃地獄は同市大字鉄輪字渋湯三四四番地の六と同所三四一番地の二の鉱泉地各一坪(竃地獄)

(四)  鶴見園は同市大字南立石字板地中須賀一九四八番の二鉱泉地二一坪七勺と同所一九五九番の二鉱泉地二六坪八勺(鶴見地獄)

(五)  加藤は同市大字鉄輪字向ノ原二八三番の二鉱泉地一坪(白池地獄)

(六)  宇都宮は同所字鬼山六二四番地の二鉱泉地一坪

二、被告は原告らに対し昭和二六年度から(但し竃地獄に対しては同三四年度から)同三五年度分までの右各鉱泉地の評価額及び固定資産税額を末尾添附の別表のとおり決定し、原告らは被告に対しそれぞれ別表記載の固定資産税を納付した。

三、しかしながら右各課税処分はいずれも次の理由により無効であるから、被告は原告らが別表記載のとおり固定資産税として納付した金員を法律上の原因なくして不当に利得し、原告らはそれぞれ同額の損害を受けた。

(一)  右課税処分には鉱泉地でない土地を鉱泉地と認定して課税した違法がある。

(1)  竃地獄所有の鉱泉地のうち三四四番地の六の鉱泉地一坪は、昭和二六年度以降同三五年五月ごろまで全く涸渇していたので、その間、利用できなかつた。

(2)  宇都宮所有の鉱泉地は、昭和一〇年ごろから同三三年一〇月ごろまでの間温泉の湧出が停止し、全く涸渇していたので、その間、利用できなかつた。

(3)  以上のような状態にある土地については、特に鉱泉地以外の土地と認定して固定資産税の対象とすることは格別、鉱泉地として課税することは違法である。

(二)  原告ら所有の各鉱泉地はいずれも温泉として利用することが不可能なものであるから、これらの鉱泉地に固定資産税を課することは違法である。

(1)  松田所有の鉱泉地からは温泉が湧出しているが、右温泉はこれを利用することができないので全部放棄し、自然の流出にまかせている。

(2)  龍巻地獄所有の鉱泉地からは温泉が間歇的に沸騰湧出しているが、右温泉はこれを利用することができないので全部放棄し、自然の流出にまかせている。

(3)  竃地獄所有の鉱泉地のうち三四一番地の二の鉱泉地一坪からは極めて少量の水蒸気が噴出しているが、これを水量に換算し、実際上温泉として利用することは不可能である。

(4)  鶴見園所有の鉱泉地からは水蒸気が噴出しているのみであつて、他から引水して恰も右鉱泉地から温泉が湧出しているような外観を呈しているに過ぎない。

(5)  加藤所有の鉱泉地からは昭和二五年七月以降温泉の湧出が全く止り、爾来水蒸気が噴出しているばかりである。そしてこの水蒸気を水量に換算して温泉として利用することは実際上不可能である。

(6)  以上のような状態にある鉱泉地に固定資産税を課することは、同税が固定資産の評価の適正と均衡を目的とし、且つ住民の信頼を失わないよう留意して課せられるべきであるとしている立法の趣旨に反し違法である。

(三)  仮に右のような状態にある鉱泉地を通常の温泉が湧出している鉱泉地と同様に評価して課税することができるとしても、本件課税処分は本件鉱泉地の価格の評価方法に関して違法である。即ち

(1)  被告は本件各鉱泉地については、地方税法三八八条二、三項、四〇三条によつて自治大臣が示した評価の基準に準じて価格を評価して固定資産税を課さなければならない。

(2)  仮に自治大臣の示した右の評価基準が課税者を法的に拘束しないとしても、課税者は無制限に自己の欲するままの方法によつて固定資産の価格を決定する権限はなく、あくまでも自治大臣が示した評価基準の本質に反しない範囲において価格の決定をしなければならない。

(3)  然るに被告は本件各鉱泉地の評価につき右基準によることなく、観覧用の鉱泉地が相続または贈与の対象となるという特殊の場合の評価基準であり、しかも地方税ではなく国税たる富裕税の評価基準たる富裕税財産評価事務取扱通達に基いて評価しているのであつて、(本件各鉱泉地については遊園地としての施設を観覧させるもので、鉱泉地そのものを観覧させるのではないけれども)仮に本件各鉱泉地が観覧用鉱泉地であるとしても、右の通達に基いて評価することは明らかに権限の逸脱で税法制度を乱すも甚しく到底許さるべきではない。

(四)  また仮に本件各鉱泉地が観覧用鉱泉地であるとすれば、他の鉱泉地とは異り、その課税評準たる価格の算定につき依拠すべき自治大臣の評価基準が定められていないから、これに固定資産税を課することは違法である。

(五)  以上本件課税処分には(一)ないし(四)の違法があり、右違法の瑕疵はいずれも重大且つ明白であるから、右課税処分は無効である。

四、よつて原告らは被告に対し原告らがそれぞれ被告に納付した請求の趣旨記載の各金員とこれに対する本件各訴状が被告に送達された日の翌日である昭和三六年三月一九日以降完済まで民法所定年五分の割合による金員の支払を求める

と述べた。

被告訴訟代理人は、「一、主文第一項同旨、二、訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決を求め、答弁として、

一、請求原因一、二の事実は認めるが、その余の事実上及び法律上の主張はすべて争う。

二、請求原因三の(一)、(二)に対し被告は次のとおり主張する。

(一)  原告ら所有の各鉱泉地はその主張の如くいずれも土地課税台帳に鉱泉地として登録されているものであり、此のような場合たとえ涸渇した状態にあるものであつても、鉱泉地として固定資産税の対象となるのである。

(二)  仮にそうでないとしても本件各鉱泉地の現況は温泉法二条にいう温泉に該当し、主として観覧に供されているのである。即ち、

(1)  松田所有の鉱泉地は「血の池地獄」として有料で観覧に供され、赤い熱湯を池一面にたたえ、周辺の緑の景観と相俟つて客観的にも観覧価値が認められ、また温泉そのものも皮膚病に適する軟こうや赤い粘土による染料を製造しており、また自家浴用には此の温泉をろ過して使用している。

(2)  龍巻地獄所有の鉱泉地は数分ごとに十数メートル以上の高さに熱湯を噴出する間歇温泉で「龍巻地獄」として観覧用に供されており、かつまた噴気、熱湯を利用して各種熱帯植物の栽培を行つており、浴用に供することも可能である。

(3)  竃地獄所有の鉱泉地のうち三四一番地の二には噴気が、三四四番地の六には噴気と温泉の湧出があり、温泉熱利用のふ卵設備を施し、噴気と併せて観覧に供している。

(4)  鶴見園所有の鉱泉地は「鶴見地獄」として観覧に供されているほか、これを浴用泉源として同地獄に隣接して休憩所(浮世風呂)を経営しており、また同原告経営の遊園地(鶴見園)にも引湯し、一般にも給湯している。

(5)  加藤所有の鉱泉地は「白池地獄」として観覧に供されており、噴気の壮観さは観覧用として至大な価値をもつている。

(6)  宇都宮所有の鉱泉地は「鬼山地獄」として観覧に供し、この鉱泉地を主体としてワニを飼育しており、また此の鉱泉地は位置変更のうえ新掘したところ、昭和三〇年一一月に強大な噴気を伴う温泉が湧出し、其の後一時的に停止したが、現在は相当量の温泉を湧出し、強大な噴気を観覧に供するほか動物の飼育、植物の栽培をなし、加えて温泉の引湯を行つており、多面的に温泉利用が行われている。

(7)  以上のとおり本件各鉱泉地はいずれも財産的価値をもつものであるから、被告市長はこれらの鉱泉地の財産的価値に着目して固定資産税の賦課期日におけるその価格を決定したうえ、土地課税台帳に登録し、これに基いて本件各課税処分をなしたのであつて、これは適法な行政行為である。

三、請求原因三の(三)、(四)に対し被告は次のとおり主張する。

(一)  原告ら主張の自治大臣が示す固定資産評価基準には、本件各鉱泉地の如く有料で観覧に供されている鉱泉地の評価基準が示されていないうえ、右の基準は市町村長の課税の際における技術的援助に過ぎず、何ら法的拘束力はないのである。そして本件は、市長が独自の判断と責任をもつて固定資産の価格の決定をなしたものであつて、右の基準に従わないからといつて本件課税処分が違法となるものではない。

(二)  本件各鉱泉地に対する固定資産税の評価基準となる価格は、昭和二六年度ないし三二年度分については、一般鉱泉地に対する考え方と比較しながら原告らを含む地獄組合との話し合いのうえ決定し、昭和三三年度ないし三五年度分については、被告の照会に対する自治省の回答によれば、「観覧用鉱泉地については収益の度合等を考慮して評価することとしても差支えない。」とあるので、本件各鉱泉地についてもこれを使用、収益するところに財産的価値が見出される点に着目し、富裕税財産評価事務取扱通達を参照して地方税法四〇三条による市長の権限においてその価格の評価及び固定資産税の課税をなしたもので、適法な行政行為である。

四、以上のように、いずれの点からみても、本件各鉱泉地に対する固定資産税の賦課処分には何らの瑕疵もないから、右処分の無効を前提とする原告らの本訴請求は失当である

と述べた。

(証拠省略)

理由

一、原告らがおのおの土地課税台帳上に鉱泉地として登録されているところの、その主張の地番の土地(以下、単に鉱泉地という)を所有していること及び被告が原告らに対し右各鉱泉地を課税の対象として、昭和二六年度から(但し原告竈地獄に対しては昭和三四年度から)同三五年度分までの固定資産税を末尾添付の別表のとおり賦課し、原告らが被告に対し右各固定資産税を納付したことは当事者間に争いない。

そこで本件各固定資産税の賦課処分が無効であるという原告らの主張につき順次、検討を加える。

二、原告竈地獄所有の三四四番地の六の鉱泉地一坪と同宇都宮所有の鉱泉地は本件固定資産税の各賦課期日当時に涸渇していたから、これを鉱泉地として認定してなした本件各固定資産税の賦課処分は無効であると主張するので判断する。

鉱泉地とは鉱泉(温泉を含む)の湧出口及びその維持に必要な土地をいうのであつて(「不動産登記事務取扱準則一〇三条ホ」参照)、右の温泉とは地中から湧出する温水または水蒸気その他のガスであつて、摂氏二五度以上の温度または一定の成分をもつものと解すべきであるから(温泉法二条一項参照)、現況において、右の温水または水蒸気その他のガスの湧出口及びその維持に必要な土地と認められる以上、当該土地が鉱泉地であることは明らかである。従つてたとえ一時的に涸渇していても土地課税台帳上に鉱泉地として登録されており(このことは右原告等の場合、前示のごとく当事者間に争いない)、且つ現況が鉱泉地としての実体を具備する以上、これを鉱泉地と認定して固定資産税を賦課することは違法ではないのである。

現況についてみるのに、証人松原子男、同生野友也の各証言と原告宇都宮則綱本人尋問の結果を総合すれば、原告竈地獄所有の右鉱泉地は本件固定資産税の各賦課期日当時において泥の中に摂氏二五度以上の水蒸気その他のガスが湧出するところの鉱泉地であつたと認めるにたり、これを覆えすにたりる証拠はない。

また、前示証拠によれば、原告宇都宮所有の鉱泉地は昭和二六年から三〇年一〇月までの間に幾度か温泉の湧出が一時停止したが、その都度掘さくして間もなく温泉を湧出させた事実を認めることができ、これを覆えすにたりる証拠はないから、右の期間中右鉱泉地が鉱泉地たる実体を備えていたことは明らかである。

次に昭和三〇年一一月以降についてみると、右原告本人尋問の結果によれば、同原告は同年一〇月に旧湧出孔(以下、旧孔という)を廃止し、同年一一月から新湧出孔(以下、新孔という)を掘さくして温泉を湧出させたところ、その後新孔からの温泉の湧出は一旦停止したが、昭和三一年度分以降の本件各固定資産税の賦課期日において、新孔及びその維持に必要な土地は現況の上で鉱泉地であつたことを認めるにたり、これを覆えすにたりる証拠はない。

ところが右鉱泉地が従前の六二四番地の二の鉱泉地(以下、旧鉱泉地という)と同一鉱泉地であるか否か明らかではない。そして昭和三六年(ワ)第七五号事件についての被告の第一準備書面添付の別府保健所長作成名義「温泉掘さく申請の許可状況について」と題する書面写によれば、同原告は昭和三〇年一〇月ごろまでに旧孔を埋めて廃孔にし、そこから東南約一〇メートルの六二三番地の四(以下、新鉱泉地という)に新孔を掘さくした旨の記載があり、此の記載に誤りなければ、昭和三〇年一〇月ごろ以降は旧鉱泉地は土地課税台帳上は鉱泉地として登録されていても、現況は鉱泉地ではなかつたといわざるをえず、固定資産税賦課の対象たる土地の地目の認定は、課税台帳の記載の如何を問わず現況によるべきであるから、昭和三一年度分以降の同原告に対する本件固定資産税は、鉱泉地ではなくなつた旧鉱泉地を従前どおり鉱泉地であると誤認して賦課した違法があるといわなければならない。

しかし前記書面によれば新旧両孔は約一〇メートルの近接した距離にあり、また前記各証言と本人尋問の結果によれば、同原告はその所有の鉱泉地の周辺に諸設備をほどこし、一体として鬼山地獄の名称のもとに観覧の用に供していることを認めるにたり、右認定を覆えすにたりる証拠はないから、同地獄内の温泉湧出口が多少移動したとしても外観上必ずしも明らかではないと考えられるうえ、同原告が新旧両鉱泉地につき公簿上何らかの届出をなした事実も、被告が旧鉱泉地とともに新鉱泉地をも対象にして固定資産税を賦課した事実もともにうかがい難く、また弁論の全趣旨によれば、同原告が新旧両鉱泉地の場所の相違自体を問題にしていないことは明らかであるから、仮に前記の如き違法の瑕疵があるとしても、その瑕疵は重大且つ明白なものであるとはいい難い。

従つて此の点に関する原告竈地獄、同宇都宮の主張はいずれも失当である。

三、次に原告松田、同龍巻地獄所有の各鉱泉地からは、温水が湧出しているが、これを利用しえないで自然の流出にまかせており、また原告竈地獄所有の三四一番地の二の鉱泉地、原告鶴見園、同加藤所有の各鉱泉地は水蒸気が噴出しているのみでこれを温水に化することは不能であるから、これらの鉱泉地を対象としていずれも固定資産税を賦課することは違法であると主張するが、これ等の鉱泉地が前示の鉱泉地の定義づけの中に入ることが明かである以上(これを左右するに足りる証拠はない)、固定資産税賦課の対象となることは地方税法三四一条一号、二号、三四二条一項の規定により明らかであつて、それが温泉として利用しうると否とによつて別異に取り扱うべしとする何らの根拠もないから、右原告らの此の点に関する主張は失当である。

四、更に原告らは本件各鉱泉地を特殊の観覧用鉱泉地として評価した方法が違法であり、その違法の瑕疵が重大且つ明白であるから、これに基く本件各固定資産税の賦課処分は無効であると主張するので判断するに、本件各固定資産税のうち昭和二六年度ないし二九年度分の賦課処分がなされた当時に施行されていた地方税法(即ち昭和二九年法第九五号による改正前の同法)三八八条二項、四〇三条一項によれば、市町村長は道府県知事または自治庁長官(昭和二七年法第二六二号による改正以前は地方財政委員会。以下同じ)が固定資産を評価する場合を除くほか、「独自の判断と責任をもつて」固定資産の評価をなすべきであつて、自治庁長官が示した評価の基準は市町村長に対する技術的援助に過ぎず、法的拘束力をもつものではないと解すべきであるから、右基準と異る方法によつて鉱泉地の評価がなされたとしても、それのみをもつてしては違法となるものではない。

次に本件各固定資産税のうち昭和三〇年度以降分の賦課処分がなされた当時に施行されていた同法四〇三条には「市町村長は(中略)自治庁長官が示した評価の基準(中略)に準じて固定資産の価格を決定しなければならない。」と規定されていたので、自治庁長官が示す固定資産の評価の基準が仮に存するとするならば、被告主張の如く右基準が何らの法的拘束力をも持たないものということはできないのであつて、右の基準に示された範囲内では、これにのつとることなく独自の判断で固定資産の評価をなすことは違法である。

しかし本件各鉱泉地は前記各証言と原告宇都宮本人尋問の結果によれば、いずれも相当の設備を施したうえ有料で観覧の用に供することを主目的としている事実を認めるにたり、これを覆えすにたりる証拠はないところ、観覧用鉱泉地の価格の評価については自治庁長官の基準が示されていないことは当事者間に争いなく、しかも一般の浴用に供する温泉が湧出する鉱泉地と観覧用の鉱泉地とでは、使用、収益の態様が異り、従つてその価格―時価―も異ることは経験則上、明らかであるから、後者の価格を前者と異つた方法によつて評価しても違法とはいえない。

附言すれば、昭和三三年度以降分について被告が昭和二六年一月二〇日付直資一―五、国税局長あて国税庁長官の「富裕税財産評価事務取扱通達」の「六三、観覧用に供している鉱泉地及びその付属施設の価額評価」を用いて本件各鉱泉地の評価をなしたことは当事者間に争いなく、原告らはこの方法によつて評価することは違法であると主張しているが、富裕税の右評価基準は当該鉱泉地の価格(即ち時価)を決定するための基準となるものであるから、その基準たる右通達を、固定資産税の課税評準となる価格決定のために用いても―本件各鉱泉地については前記のとおり依拠すべき課税評準が示されていないのであるから―違法とはいえないことは明らかである。

よつて此の点に関する原告らの主張も失当である。

五、次に原告らは本件各鉱泉地が観覧用鉱泉地であるとすれば、その評価につき特に自治大臣の評価の基準が示されていないから課税しえないと主張しているが、右の基準が示されている以上はそれにのつとつて評価しなければならないこと前記のとおりであるが、その本質は地方税法三八八条二項の規定からも明らかな如く市町村長に対する「技術的援助」であるから、それが示されていないからといつて固定資産の評価及びそれに基く固定資産税の賦課をなしえないわけではないから、原告らの右の主張も失当である。

六、以上のように本件各固定資産税の賦課処分が無効であるとする原告らの主張はすべて理由がないから、これを前提とする本訴請求はその余の点について判断するまでもなく失当である。

よつて原告らの各請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条本文を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 藤野英一 西池季彦 多加喜悦男)

(別表省略)

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